♢私立小学校訪問記/立命館小学校
2022.01.12
15年前に出来た校舎は独自のカリキュラムに適した作りになっており、普通教室は広いオープンスペース型の教室で、各教室間の扉を開いて学年単位での活動もできるそうです。4階は特別教室のフロアで、「陶芸の部屋」「ロボットの部屋」「博士の部屋」「コミュニケーションルーム」「伝統文化室」などを設け、「本物の体験」として子どもたちが学びにふれられるよう工夫されています。
本日は立命館小学校の校長先生と入試部長の先生と面談しました。
下記は校長先生と入試部長の先生とお話したことを列記します。
【学校では、教育の目的をどのように考えていますか】
「培根達支」、学祖である西園寺公望の言葉ですが、人生を豊かにし、学問を大成させるには、生き方の根本、学びの基礎・基本を若いうちにしっかり養い育てることが重要であるという意味です。立命館小学校ではその信念を継ぎ、生き方の根本、学びの基礎・基本をしっかり身に付け、社会のさまざまな分野で活躍してほしいと考えております。
【受験対策はどのようにすればよいのでしょうか】
ペーパーテスト、行動観察、運動、親子面接があります。
1.ペーパーテスト
推理、言語、図形、記憶、など一般的な思考力の問題です。
2.行動観察
まわりのお友達へのかかわり、積極的な行動、集団での適切な行動ができるかなどを見ます。行動観察では児童に 感想を話して頂く機会があり、自身の行動、考えをどのように表現するかを見ます。
3.運動実技
運動能力の高さを見るのではなく、幼児期の間に育っていてほしい身体能力と身体バランスを見ます。
4.親子面接
保護者さまには、本校の教育理念に対するご理解、志望理由、ご家庭での教育方針、お子様に対する思い、願いを聞きます。
お子さまには園での生活、家での生活、友達とのことを聞きます。
【立命館小学校の教育の内容】
本校は、子どもの発達段階や学問の成果を踏まえ、より合理的なカリキュラムを追及しています。また「自由と清新」を建学の精神とする本校は、教育の全過程を通して人間力育成を意識的にカリキュラムに取り込みます。
主体である子どもたちが「自ら学び、自ら鍛え、自らを超えて成長する」ために、4つの教育の柱に基づき、学力や芸術教育、倫理教育など、人として生きていくうえでの基礎基本の習得を徹底します。
1.確かな学力を育てる教育
本校では、ただ知識を獲得することだけで、学力が形成されるとは考えていません。
英語力もプログラミング力も「ツール」として捉えています。
児童たちがそれらのツールを活用し考え、他者と一緒に行動し、表現する。そこで知識と経験がつながることで「確かな学力」が培われると考えています。
他者と一緒に行動するため、時にはお互い意見対立することもあります。この時、教員はあえて何も言いません。児童が自分の意見を伝え、相手の話を聞き、どうすればお互いが納得できるか、を考え始めるのを待ちます。対立を超えていくプロセスを小学生の時から経験することは、これからの社会で確かな力として生きていくと考えています。
<モジュールタイム>
毎朝10分間「モジュールタイム」として、脳の活性化と集中力の育成をベースに、「詩文の音読」や「英語の発声」や「認知能力を高める活動」を実践しています。詩を通して日本語の音やリズムを楽しみながら詩文に慣れ親しむ、英語の発声を毎日続けることで自然な発音を身につける、また、「計算する・比べる・覚える・聞く」等の学習の基盤となる人間力育成を育てる時間と位置づけています。これらをテンポよく行うことで、学びの姿勢を整え、勉強に適した状態で一日をスタートします。
<ICT教材の活用>
ICTのスキルやプログラミング能力を伸ばすことは大切ですが、それだけが目標でありません。様々なテクノロジーをツールとして活用し、自らの発想を表現する力を養います。最先端の技術を活かした授業は世界からも注目され、日本で唯一のMicrosoft Showcase Schoolに選出されており、ICT教育のフロントランナーとして授業を進めています。
<学習者主体の考える授業>
教員から子どもたちへ一方向に知識を伝える授業形態だけでなく、子どもたちが持つ好奇
心や発想力を大切にした学習者主体の授業形態も取り入れています。自ら考え、子どもたち同
士で協力して課題解決を行うことで、積極的に新しい物事にチャレンジする姿勢と思考力を
育みます。
<読書活動/辞書引き活動>
本校ではカリキュラムの中に「読書の時間」を設けており、児童たちは本を読むことが大好きです。メディアセンターと呼ばれる図書室には蔵書が44,000冊、うち洋書が6,000冊あり、年間一人平均140冊も借りています。読書の授業では読み聞かせや本の紹介、ビブリオバトルなど、本とどう付き合っていくかという学びを行っています。また、「白川漢字」の学習にも取り組んでおり、漢字の成り立ちを楽しみながら学んでいます。
2.真の国際人を育てる教育
英語を流ちょうに話せることは国際人として必要な要素です。しかし、本校が考える「真の国際人」は、そのようなスキルとしての国際力だけを指しません。自分と異なる他者がいることを受け止め、理解しようとし、世界という大きなフィールドの中で手を取り合いながら、自ら行動できる。そのようなマインドとアクションを兼ね備えた人こそ「真の国際人」として世界で活躍できると考えています。
<1年生からの英語教育>
朝のモジュールタイムでの英語発声をはじめ、1年生から週2時間オールイングリッシュで英語授業を実施しています。ネイティブ教員と日本人教員の完全2名体制で行うことで、無理なく自然な英語が身につきます。3年生からは週3時間、5年生からは文法も取り入れ、成長に合わせてスキルアップしていきます。
<プレゼンテーションコンテスト>
高学年から始まる「ICT」の授業では、マインクラフトを活用した協働型学習を行っています。またマイクロソフトの講師によるプレゼンテーション講習で学んだ技術を生かし、プレゼンテーションコンテストを開催しています。
<ワールドウイーク>
毎年夏に92ヶ国の学生が学ぶ立命館アジア太平洋大学の学生を「先生」としてお招きし、各国の文化や価値観に触れるワールドウィークを開催します。異なる文化や価値観を学ぶ特別授業が行われます。志の高い留学生と1週間にわたって世界について知り、体験することで、子どもたちは多様な人との関わり方を学びます。
<海外研修プログラム>
本校では世界6か国の学校と提携し、最大2ヶ月間の海外研修プログラムを設置しています。チャレンジ精神を育む「チャレンジ型」、現地児童と交流する「交流型」、自立した生活力や英語力を磨く「アドバンス型」の3つのプログラムを用意し、子どもの成長や研修先での目的に合わせて選択が可能です。英語力を培うだけでなく、ホームステイや寮生活によって自立心や生活力も磨かれ、自己管理能力を高めるきっかけにもなります。
3.豊かな感性を育む教育
本校では図工や音楽などの表現教育を通して、自分を大切にする力、他者を大切にする力、そして共に生きる力を育みます。そのために、日常の学校生活の中で新鮮で美しい本物の世界を見せられるような環境を充実させ、これからの可能性を切り拓く感性を育てています。
本校の図工教育では、「間違っていい」「失敗してもいい」「人と違う表現ができる」を大切にし、「考える力」「決める力」「表現する力」を高めます。
自分自身で考え、行動する自発的な思考力を、アートを通して身につけます。
<抹茶茶碗づくり>
図画工作の教科内で陶芸授業を行い、6年間通して様々な作品を制作します。3年生では、おもてなしの造形として抹茶茶碗づくりに取り組みます。お母さんやお父さんなど大切な家族に贈る抹茶茶碗からは、子どもたちの思いやりと創意工夫が感じられます。
<文化フェスティバル/合唱コンクール>
文化フェスティバルでは、いろいろな教科での探究的な学びを生かした発表をします。特に高学年では、ひみつの色の教室(季節ごとの草木染)の学習や日本舞踊、お箏の演奏を通して「日本の四季」を表現したり、世界各国について調べ、その国の楽器や伝統的な音楽に挑戦しながら世界を巡る舞台発表を行っています。
<本物に触れる学び>
本校では琴や狂言、日本舞踊など日本の和の伝統に触れる機会を多く用意しています。古くから伝わる表現方法とその魅力を感じ、伝統の深さと意味を考えます。本物に触れる経験を持つことで、子どもたちは日本の文化を知り、海外の文化や伝統への興味を自然と広げていきます。
4.高い倫理観と自立心を養う教育
他の国の異なる文化を持った人だけでなく、身近にいる一人ひとりも決して同じ人ではありません。自分と異なる価値観や背景を持った人と思いを交わし、支え合いながら共により良い未来を築いていく力。それが本校の考える「高い倫理観と自立心」です。1年生から6年生までの異年齢での集団による学校生活と、本校の抱える伝統と歴史から導く理念に触れながら子どもたちの豊かな成長を支えています。
<立命科>
「道徳」の内容を含む授業を、本校では「立命科」として創立時から実施しています。立命館の創立者をはじめとした先人たちの思いや業績を教え、そこから感じ取ったことを子どもたち自身の言葉で整理します。道具を使ったりストーリーを作ったりと、実践的な内容も組み込むことで子どもたちへの定着を目指しています。
<ハウス活動>
1年生から6年生までの一人ずつ集まって「ハウス」を構成し、普段の清掃活動をはじめ、遠足やスポーツフェスティバルなどの行事をハウスで取り組むことで、支え合う協調性と自ら行動する自立心を養います。入学して自分のことで精一杯な1年生も異年齢での学び合いを通して、卒業する頃には周りを思いやり行動する姿を見せます。
<立志式>
本校では1年生から4年生を基礎・基本を固める「1stステージ」、5年生から中学2年生までを夢を実現する力をつける「2ndステージ」と捉えています。立志式では1stステージを終え2ndステージに上がる4年生が、保護者や教員、1つ下の3年生に向けて、自らの志と夢を堂々と発表します。
<社会見学・宿泊体験学習>
ホンモノから学ぶことを大切に、1・2年生では徒歩で行ける鴨川や植物園での自然体験を大切にしています。3・4年生では地域や京都について学ぶ社会見学を数多く行っています。宿泊体験学習は高学年から実施しており、広島での平和学習など、普段の教科学習を生かし、より深い学びにつながる取り組みを行っています。
【訪問を終えて】
立命館小学校は開校から15年となりますが、普通教室をはじめ、理科室、図画工作室、音楽室、家庭科室などの特別教室はいずれも、独自の教育カリキュラムに連動したさまざまな機能を備えています。そのほか、「陶芸の部屋」「ロボットの部屋」「博士の部屋」「コミュニケーションルーム」「伝統文化室」「メディアセンター」「アクトシアター」などの充実した設備は本校の魅力の1つでしょう。
また立命館学園グループの強みを活かし、小学校の学びの中に、中学生や留学生、大学の教授などからサポート受けられることで、より専門的な学びができることも大きな魅力でしょう。
【ピグマリオンとの関連性】
立命館小学校の「自ら学び、自ら鍛え、自らを超えて成長する力」は、ピグマリオンの思考力教育と関連性があります。
ですから、入学後も安心して、ピグマリオンで育てた思考、創造する力で、「自ら学び、自ら鍛え、自らを超えて成長する力」を育ててください。