♢私立小学校訪問記/京都聖母学院小学校
2021.12.17
♢私立小学校訪問記/京都聖母学院小学校(2021年12月)
校門を入ると陸軍16師団司令部の庁舎として建てられた「聖母女学院本館」があります。
国登録有形文化財に答申され、夜にはライトアップもされるそうです。
本日訪問する小学校は伝統的な価値と未来のスキルをテーマに教育を行う京都聖母学院小学校です。校長先生は外国の方で小学校、中学校、高校のすべての校長をされており、12年間一貫した教育方針を実現されております。
では校長先生と募集対策担当の先生とお話したことを列記します。
【学校では、教育の目的をどのように考えていますか】
「聖母の子どもの一人ひとりが家族のため、友のために、また社会において真理の中に人々の心を結ぶ平和の天使でありますように」は創立者メール・マリー・クロチルド・リュチニエの言葉です。「祈り」「命」「仲間」「学び」を4つのプロジェクトと位置付け、カトリック校としての建学の精神を受け継ぐこの場所で、創造性と誠実さを持ち、奉仕の喜びを知る平和の天使を育みます。
1.祈り
祈りに始まり祈りで終わる学校生活や宗教行事を通して、子どもたちは神の存在を知り、手を合わせて祈ること、感謝することを学びます。「お米一握り運動」、「ルワンダレスキュー隊」、「ウォーカソン」といった奉仕活動を行っております。
2.命
日々の祈りや教育を通して、命の大切さを知る「命の学習」や怪我をしない病気に負けない健康な体づくりを目的とした「SEIBO身体づくりプロジェクト」などを通して、生涯を通して命と健康について考えられる子供の育成を目指しています。
3.仲間
本校では、共に学びあう仲間の中で、自分が一人の人間として大切にされていると実感できるクラス作りを進めています。
異学年で行う「清掃活動、登校班」、成人式に行う「成人の集い」、スカイプを利用してオーストラリアやルワンダの方々との交流など世界の仲間や多様性に触れるなど、さまざまな人との出会いや関わりが経験できます。
4.学ぶ
意欲的に学ぶことで確かな基礎学力を養います。
まわりの人と共に考えることで豊かな発想に加え、次の学びや生活に生かす力を育みます。学びの連続と活用を意識し、社会で活きる教育を行います。
教師が教える場面と子ども達が思考・判断する場面を、効果的に設計し関連させながら指導します。夏休みの研究では、「算数・数学の自由研究」作品コンクールの全国審査で最優秀賞に選ばれた児童もいます。
詳細は【京都聖母学院小学校の教育の内容】にてお話しします。
【受験対策はどのようにすればよいのでしょうか】
当校は総合フロンティアコース、国際コースの2コースがありますが、試験は同じ内容となります。
国際コースでの英語の試験はありません。
試験内容は親子面接、適性検査があります。
- 親子面接
親子面接ではご家庭の教育観、親子関係を見ます。保護者の方には当校の教育方針とご家庭の教育方針が合っているか、お子様とのかかわり方、お子様の成長についてなど聞きます。お子さまにはご家庭、幼稚園・保育園での活動を聞きます。
2.適性検査
ペーパーテスト:一般的な思考力を問う問題となります。
生活:はさみなどで制作物を創る工作、指示通りに行動できるか、片付けができるかを見ます。
運動:まねっこ体操などを通して、基礎的な体力、バランス感覚があるかを見ます。
運動は集団で行いますので、周りの人との協調性があるかも見ます。
今年度の適性検査は各分野約20分でした。
【京都聖母学院小学校の教育の内容】
「コミュニケーション力」、「テクノロジー力」、「クリティカルシンキング力」の3本柱で「伝統的な価値」と「未来のスキル」を育みます。
カトリック教育では、全ての人は神に愛されていると学びます。伝統的価値とは、本校が創立以来大切にしてきたマナーや思いやり、そして相手を尊重する心です。それらと同様に、コミュニケーション力、テクノロジー力、クリティカルシンキング力は未来の世界で充実した人生を送るために必要な大事な力です。経済情勢、世情の変化や混乱にかかわらず、これらの力を持つ人間はどのような状況下でも際立ち、活躍します。これが本校の「伝統的価値」と「未来のスキル」です。では本校が掲げる3本柱と各コースについて説明したいと思います。
- コミュニケーション力
自尊心、上手な関わり、上手な自己表現、言語の能力、リーダーシップ、感情・ストレス管理などのコミュニケーション能力を養います。
自分の伝えたいことを明確に表現することができるように、児童たちは自分たちの考えや気持ちをはっきりと自信を持って伝える学習を行います。他者と信頼し合い、協力してコミュニケーションを図る力を養います。コミュニケーション能力は人生を充実させ、職業に生かされます。私の知り合いが勤めている会社でも、知識が豊富で勉強はできるが、プレゼンやディスカッションの場でうまく表現できない人がいると聞きます。本校では自身の能力を最大限発揮できるコミュニケーション能力を育みたいと考えています。
2.テクノロジー力
テクノロジー力については目標達成のための上手な道具の選び方、アナログとデジタルの上手な組み合わせ方、効率、生産性の良い道具の使い方、ICTなどを学びます。デジタル機器を使いこなす力を身につけて欲しいと考えています。
3.クリティカルシンキング力
クリティカルシンキング力は情報処理、情報整理、数学的思考、情報分析、想像力、問題解決力を養います。クリティカルシンキングは批判的思考と訳されることが多いですが、本校では「核心を見つける」を意味します。
未来はデータとプログラミングの世界です。簡単な数の計算などは機械がする時代です。我々はその中で、繰り返しやパターンの傾向を見極め、直感的想像力を活かしながら論理的に問題を解決する学習が必要です。
4.総合フロンティアコース
2021年より、名称が「総合コース」から「総合フロンティアコース」に変わりました。
自ら学びを深め、時代や社会の変化に柔軟に対応できる学力や素地を身に付け、未来に対応できる人材を育てます。総合フロンティアコースの目指すものは以下の3つになります。
・柔軟な思考力の育成
学習習慣をつけるとともに、多様に変化する時代や未来にも柔軟に対応できる確かな学力を身につけます。相互の考えを伝えあい、コミュニケーション力や深め合う力を養います。さまざまな学習場面で情報収集や分析を行い、クリティカルに考える力を養います。本校は問題解決力・データ分析力をつける算数を実践しています。見通しを持つ、数の楽しさに気づく、解決までの思考を楽しむ実践に取り組んでいます。
情報収集・分析したものを表やグラフで表現する力や論理的思考で課題解決する力、集団で解決し相手を意識したプレゼン能力を育成します。
・優れたクリエイターの育成
挑戦することを楽しみながら繰り返すことで、新しく発見する力や豊かに発想する力を養います。作る・育てる・試すなど、自分たちの手で作り上げる経験を多く重ねます。プログラミング教育など試行錯誤、企画力、リフレクション能力、学びを生活に生かす力をつけ、実践力ある人材を育てます。
全学年、情報の時間で機器の使いかた、お絵かき、キーボード入力、文章作成、調べ学習、プログラミングまで 系統立てて学習します。教科の学習でもiPadやクロムブックなどのICT機器を使い、情報で学んだことを効率的に活用します。
・豊かなコミュニケーションの育成
相手の立場に立って考える力、思いやる力、互いを尊重し活かし合う力を育成します。
友達、先生、家族との日々の関わりはもちろん、様々な国や地域の人々との出会いの中で、役立つ豊かなコミュニケーションを養います。教科で学んだことを英語で表現する「CLIL学習」を通して、世界の人々と共に生きる 人材を育成します。
週2時間の英語の授業で、1時間はネイティブと日本人教員のペアが、もう1時間は英語専科の日本人が英語でのコ ミュニケーションを育みます。
このような取り組みから、最近では調べたことを発表する機会に、英語での発表に挑戦する総合コースの高学年児 童も現れました。
5.国際コース
多くの強化を英語で学習し、世界を舞台に活躍できる英語力と、自分の考えを相手に伝えられるコミュニケーション能力を育成します。
国際コースで目指すものは以下の3つになります。
・コミュケーション能力の育成
教科で学ぶツールとして英語を位置付けることで、日常的に英語に触れる環境を創ります。それにより意思疎
通、自己表現をスムーズに行うのに不可欠な、実践的英語力の基礎を自然に身に付けます。
検定教科書の翻訳本などを利用し、学習指導要領に基づいて学習します。
算数などは日本語で学ぶより理解が早い児童もいます。
またネイティブ講師と日本人教員のティームティーチングにより、生きた英語に触れながら、基礎学力が身につけ
ることができる環境を作っています。
3年生までは英語で多くの教科を学びますが、4年生からは社会、5年生からは算数、理科、社会を日本語で学ぶこ
とで、専門的な知識の習得につなげます。
・異文化を理解する心の教育
様々な文化・習慣・価値観を持つ人々と心を通わせ、好ましい関係を構築できるよう外国文化について学びま
す。同時に日本文化を体験する機会を設け、双方を尊重する健やかな心を育てます。
・世界にはばたく人材の育成
基礎学力に基づいた自分の考えをしっかりと持ち、ネイティブ講師も含めた周りの人々と強調しつつ、考えを深
めていくことができる力を育てます。自らの課題を見つけて、グローバルな視野で考え、解決できる人材の育成を
目指します。
3.4年生では国内での英語合宿で英語を使った日常生活を体験します。5年生は夏休みにオーストラリアで語学研修
を実施し、現地の文化を肌で感じながら、英語力の向上を目指します。
「DO in English」が大切であり、自分の持つ英語の力で、話したり、考えたり、発表する等を日常的に行っていま
す。このような取組から国際コースの児童は間違いを恐れない児童が多いと感じています。
【訪問を終えて】
京都聖母学院小学校の本年度の受験者数は募集120名に対しかなり上回ったそうです。
校長先生はご家庭が何のために学校を選ぶのかを真剣に考え、本校の教育の特色をまとめ、その成果・エビデンスを具体的なデータ、映像なども交えて説明されておりました。また今の状況に満足せず、さらに進化を続けたいという姿勢は素晴らしいと思いました。多くの方が受験されたのは、ご家族が具体的な学校生活をイメージでき、安心してわが子を預けたいと思われた結果なのではないでしょうか。
【ピグマリオンとの関連性】
京都聖母学院小学校の「思考力の育成」「クリティカルシンキング力」は、ピグマリオンの思考力教育と関連性があります。
ですから、入学後も安心して、ピグマリオンの思考力教育で育てた創造力で、「思考力の育成」「クリティカルシンキング力」を続けることができるでしょう。